その背中最近どうだ、と尋ねられれば、何がですかと答えざるを得ない。決まってるだろうと菫色の瞳が語るのは、ほかでもないメイスのことだ。メイスは最近、自分たちとは違う部署に一時的に配属され、勤務時間がずれ込んだ。ボスとはなかなか会うことができないから、つい先程すれ違ったときに、あまりに痩せこけてしまったことを心配しているのだ。かく言う自分も、朝を迎えて隣で熟睡している彼を起こすのは流石に憚られて、食事までは気を回せていなかった。「ちゃんと僕らがやってやらなきゃ、彼はうっかりさんだからな」「はぁ」もともと食に頓着がない彼は放っておくと栄養ドリンクだけで三日も四日も起きている。食って寝る、それだけのことが彼は億劫らしい。そして今日も朝を迎える。俺の...03Dec2020リオ・フォーティアゲラメイ
ヴァイオレットの憂い「あめだ」「まずい、早く帰りましょう」買い出しの帰り、通り雨とみられる雲が頭の上にたむろして、荷物が重いと言うのになんて事だとため息をつく。ボスは気にせず荷物の半分を持ってくださり、村の方はまだ無事だなと、ここでも皆のことを気にかけていた。「メイス、後ろに乗れ」「え、いや、俺もダラス出せますし」「いいから。風邪引くぞ」ボスは言うなりデトロイトを生成し、シートの後ろに荷物を置く。雨雲の様子を見ながらジャケットのボタンをぷちぷちと外し、俺に渡した。「これを傘にしてくれ」「…はぁ」仕方なくシートの後ろに腰を下ろすがデトロイトの乗り心地は俺には最悪だった。まずスピードが早過ぎる。風下に向かって走っているはずなのに、だんだんと強くなる雨粒が迷...03Dec2020リオ・フォーティアゲラメイ