ごはんをつくろうなすが二本、エリンギ、鶏むね肉。あと薬味の生姜。同じ大きさに切れよと念を押されたけど、それぞれの元の大きさが違うんだから、最初からそんなこと無理なのだ。野菜類は切ったらざるにいれておいて鶏肉にかかる。皮はどうする?トースターで焼くか?もう面倒なので捨てることにした。すべてを五センチ角ほどに切ったらあとはフライパンで肉を焼いて、適当に焼き目がついたら中まで火が通ってるかなんてどうでもいい。そのまま野菜投入。醤油大さじ三、みりん。みりん?あったかそんなの。ねぇな。酒…無い。……醤油じゃなくてめんつゆにするか。砂糖を大さじ二。器の中で固まったひとつをそのまま投入した。「まぁまぁ、溶けるから。」ひとりごちて弱火にすると、くつくつと調味料の沸...03Dec2020ゲーラゲラメイ
ゲーラ君のお仕事キラキラと埃の舞う参道、背の高い本棚がひしめく言葉の杜。これは私だけがお目にかかれる特別な景色だった。この古書店は十年ほど前に祖母から受け継いだもので、片田舎の風貌を残した店構えは、都市開発で乱立したビル街で、タイムスリップしたかのような趣があった。客足は少ない。歴史の古い市立大学はあるが、一駅先の巨大な専門店に皆流れてしまう。だから私は昼下がりを、店奥の玉座にて売り物を読み漁る時間にあてていた。アルミサッシの引き戸が軽やかな音を立てて開く。ひょろりと高い身長、少しよれた生成りのシャツ、スクエア型の紺色の眼鏡。少し垂れた優しい目を携えて、彼はやって来た。「すみません、これください」空気を含んだ柔らかそうな赤い髪を後ろで小さく結って、...03Dec2020ゲーラゲラメイ